今回ご紹介する本は、
「インディーゲーム中毒者の幸福な孤独」ソーシキ博士著。出版社:集英社
アニメーション作家のソーシキ博士が、小説すばるで連載されていたエッセイをまとめた本になります。
昨今、インディーゲームでも商業的に成功するものが増えていますよね。UNDER TALEだったり、Vampire Survivorsだったりと、有名なものも増えています。
本書の著者ソーシキ博士は、インディーゲームが大好きなんですが、ただのインディーゲーム好きではありません。かなりマニアックなインディーゲームを数多く堪能されています。本書はそんなソーシキ博士が遊んでいる、ひっそりとネットの片隅にあるようなインディーゲームを紹介してくれるものになります。
かなり奥深いインディーゲームの世界
インディーゲームの中でも有名なもの、そうでないものがあります。
本書で紹介されているインディーゲームたちは、かなり個人的な思いで作られたインディーゲームたち。それらに焦点を当ててエッセイを綴られています。私もゲームをたくさん遊んできましたが、ここまでマニアックなものはあまりやったことがなく、知らないことばかりで新鮮で読み進めるのが楽しかったです。
マニアックと言っていますが、実際にどんなゲームを取り扱っているのか、簡単にご紹介します。たとえば、勢いで作られてしまったちょっとおバカなゲームたちも紹介されていますし、それとは正反対のシリアスなゲームもあったり本当に様々。トイレのシミュレーションゲームだったり、おバカなものも多い印象。
製作者がとにかく自由に作っているゲームたちを対象にしています。おバカなゲームも多いですし、こちらも肩ひじ張らず、インディーゲームの世界に入り込むことのできる本になります。
インディーゲームの自由な世界
本書で紹介されているインディーゲームは、かなり特徴的なものばかり。勢いで作ってしまったよくわからないゲームなどかなり癖が強いものが多いです。大手のゲーム会社では絶対に作れないような自由でのびのびとしたゲームたちを知ることができるんです。そんな小さくても自由なゲームたちを見ていると、みんな思い思いの気持ちをゲームに載せて表現しているなと、感心しながらも楽しく読むことができます。
ゲーム制作者が世の中に感じていることや思いを反映させているものもあり、インディーゲームの多様な世界に引き込まれていきますよ!
そんな自由なゲームを作った製作者たちと、まるで話しているかのように進むエッセイなので、そこも面白く読めるところです。著者の語り口も冷静でありつつも、ちょっと笑いながらインディーゲームを紹介してくれている印象があります。だからこそ、インディーゲームの世界を楽しく知ることができています。
ちょっとおバカなゲームから、ゲームになっていないようなゲームまでも、著者が紹介してくれると、その先にいるゲーム制作者と対話しているように感じられるんです。おバカな話をしている時もあれば、シリアスな対話をするときもある。絶妙なバランス感覚で多様なゲームの紹介がされています。
著者のインディーゲーム愛が伝わる。
著者のインディーゲームの知識もすごいものです。実際かなりの数のインディーゲームを遊んでいるのが伝わってきます。それらのインディーゲームたちを、特定のテーマに沿って複数ゲームを紹介してくれるから読みやすい。
たとえば、マリオのパロディがテーマの回もあります。著者はパロディも結構な数をプレイされていそうです。しかもマリオのパロディのパロディまであるらしくそんなカオスな世界も紹介されています。
他にも、「人間臭いゲームたち」というテーマの場合、ゲームの中でふとした折に見える現実から続いてくるような人間臭さがあるゲームを複数紹介してくれたりします。ディープなインディーゲームの世界を覗き見できる。そんな感覚があります。
数多く紹介されているゲームを見ていると、ちょっと遊んでみたい、見てみたいという気持ちになってきます。
おわりに
普通にゲームを遊ぶということだと、商業的に成功しているゲームなどがやっぱり目に留まります。それはインディーゲームの世界でもやっぱり同じです。
でも、本書はそんな商業的な成功は問わず、ゲーム制作者の個性が爆発している様々なゲームに着目して、紹介してくれる本です。
そんな個人的な思いが溢れているゲームたちを、インディーゲームが大好きな著者が紹介してくれる良質なエッセイでした。
ゲームが好きな方は、この不思議な世界に一緒に足を踏み入れてみませんか?